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〜繰り返される戦争〜






第弐章





初戦はパラオ






















アメリカ合衆国の亡命政権の所在地は北マリアナ諸島にある。 残った米軍は北マリアナ艦隊と数個師団となって活動している。
しかし、北マリアナと目と鼻の先に有るパラオは今だ敵軍の占領下にあり、 亡命政府を圧迫している。 亡命政府移転計画も持ち上がったが、将兵に与える敗北感を考慮すると、 安易に動くわけにもいかなかった。




















――― 旗艦「夕闇」 ――

田端は海図の一点を指差した。
パラオ・・・太平洋でもかなり日本に近い国で、 アンガウル州では日本語が公用語の一つになっている。
しかし、今は北マリアナ艦隊を圧迫する格好の基地となっている。

敵のパラオ艦隊の無力化、これが今回の任務である。





「なあ、何で俺が作戦会議に出るんだ?」
作戦会議、杉並、眞子、萌、田端、畑中(田端の副官)、工藤がいるのは当然だしかし・・・。
「なぜ、俺がここにいる。」
「使える人間は使っておいたほうがいいだろ。」
「・・・・・かったりい。」
「では、これから作戦会議を始めたいと思います。」
田端の隣にいる人物、畑井少佐が淡々と述べる。どうやら、田端と同期同部署だったらしい。
「今回は北マリアナ艦隊と共同の作戦を実行します。 北マリアナ艦隊は実戦闘艦は百隻、敵艦隊・・・ミクロネシア方面艦隊は二百です。 艦隊長は猛将タイプで、有能。」
「ちょうど二倍か。その差を埋めるのはたった三隻か? 俺たちに一体どれだけ動けって言うんだ?」
半ば呆れたように朝倉が言う。
「これは〜、正面からまともに戦っても効果がありませんね〜。く〜」
「お姉ちゃん!!」
・・・不安になるんで、眠って言わないでください。
「田端中佐、たしか、風切は艦隊の中で最も速いのであったな。」
杉並が確認すると、田端は静かにうなづいた。
「風切は独自に動くということか?」
工藤が確認を取る。
「かったりいが、そういうことになんのかな。一撃離脱で中枢を狙うってところか?」
「おお、同志よ、よく理解した。成長がうれしいぞ。 敵将が有能ということは、それがいなければただの烏合の衆だ。」
「俺の仕事が増えそうだ・・・・かったりい。」
整備研究班の朝倉にとって、艦に傷がつけばそれだけ仕事が増えるということだ。
「はっはっは。がんばれよ、朝倉。お前の腕一本にこの艦隊がかかっているんだからな。」
「はあ・・・」









午前10時、天気は快晴。
水平線の向こうにおぼろげに見えるは敵艦隊。
亡命アメリカ軍北マリアナ艦隊、小艦隊霧雨VS帝国軍ミクロネシア艦隊の 対決が静かに始まった。

艦橋には艦長 萌、副艦長 眞子、それに、主砲 環、研究担当の朝倉、美春、ななこ、 空戦担当の杉並、無人機担当の和泉子、艦橋看護の音夢をはじめ、様々なスタッフがいる。
「では〜、作戦通り敵旗艦へ」
戦場に似合わないおっとりとした声で言う・・・・・。
「全速前進、目標敵旗艦、つっこめぇ〜〜〜。」
誰が言ったかは言わなくても分かるだろう。
艦が唸りを上げる。水上にいるものでは恐らく最速であろうスピードで戦場を駆け抜ける。
「偵察機用意。」
眞子が威勢よく言葉を放つ。
「紫兵曹、群飛3号機射出用意!」
「あい、了解しました。群飛3号、装填発射準備完了しました。異常なしです。」
「射出!」
「了解です。群飛3号発射。」
モニターのなかを真直ぐに飛んでいく黒い機影。 無人なだけに、普通の戦闘機では無理な動きもできる。 射出5秒で音速を超え、一気に水平線上まで飛んでいく。 同時に、和泉子が報告する。
「敵旗艦発見しました。位置は敵艦隊の先頭、敵陣形は紡錘形、中央突破型の陣形です。」
「了解、よくやった。」
「では、敵旗艦に真横から横切るような形で艦を進めましょう。」
「進路修正、敵のどてっぱらに突っ込めーーーー!!」
眞子が萌の意を受けて具体化する、そんな関係であろうか。

「それにしても・・・」
朝倉は思う。
「眞子、いくら普段ああ(・・) だからって、なあ。」
朝倉が感じた違和感。それは、眞子がどうしても歴戦の猛将に見えてしまうことだ。 普段からその傾向はあるにはあるのだが、今の雰囲気はそれとはかけ離れて見える。
「なに、多少の演技は入ってるのさ。 将は絶対に兵に不安を抱かせてはならない、というからな。」
隣の杉並が答える。男二人してぼ〜っと座っているのであるが、 出番がないようなのでしょうがない。朝倉にとっては喜ばしいことだが・・・。
「田端もか?」
「そういう要素もある。」
田端は何事にも動じない、という性格がある。それも軍事では資質なのだろうか。

突然、和泉子が叫ぶ。
「偵察機、敵艦隊が砲撃開始を確認。」
「故ノ宮、防衛弾幕展開!」
「了解。防衛弾幕、展開します。」

「防衛弾幕だって!?」
「そうだ、何を驚いている。」
防衛弾幕、この前朝倉が開発したプログラムを使ったシステム。 簡単に言えば、敵の『弾丸など』を認識し、『打ち落とす』システムのことである。 全くの暴挙とも言ってもいいこのシステムを完成させるために何日徹夜したことか・・・。
思えば、ここのところ何に使うか分からない、 無理難題な仕事が連続して回ってきたような気がする。
「俺は今、ものすごくかったるいことに気付いた。」
「やっと気付いたのか?」
「知ってたのか?」
「もちろん、同志よ。」
さわやかな笑顔で返すな。

朝倉と杉並が不毛な会話を続けていたころ、 防衛弾幕はとてつもない効果を示していた。 船体に当たる軌道の弾のみを選別銃撃し、 次々にパラパラと目の前で落ちていくさまは爽快ですらある。
「敵旗艦接近します。」
オペレーターが叫ぶ。
「主砲故ノ宮、複合砲用意、広角スタンモード。照準、敵旗艦、艦橋」
眞子が吼える。
「了解、発射準備完了!」

「広角スタンモード搭載の複合砲、これもか。」
こちらも大変といえば大変だった。 つまりが、これは弱いレーザー砲で敵の目を一時的に麻痺させたあと、 さらに自己掘削式のスタングレネードを打ち込む。 そうすると、誰も死なずに艦艇を無力化できるというものだ(失明の恐れあり)。 他にもいろいろ機能はあるのだが・・・・

「スタン、発射します。」
言葉と同時に敵旗艦が真っ赤に燃えたような光を出す。否、反射する。
よく見ると、旗艦の艦橋には槍のようなものが刺さり、埋まってゆく。
同時に第二の光――今度は白い光――が溢れ出る。

あまりのことに敵艦隊の攻撃が止む。
その隙に偵察機が舞い降りて敵旗艦を撮影する。
「こちら紫、敵旗艦の無力化確認。」
ほっとした空気が流れる。
この艦で初めての任務はうまくいきそうに思えた。
「では、ここから去りましょう。作戦はとりあえず達成です。」
「全速前進!いち早くここから離れる。」
「どうやら〜、成功したようですね〜。田端君に通信しておきましょう〜」
眞子が呆れ顔でマイクをはなす。
「お姉ちゃん、一応上官なんだから、君付けは無いでしょう。」
「それもそうですねえ、あ、田端君?。」

しばらく観ていると、北マリアナ艦隊が殺到し、敵艦隊は旗艦を残して撤退してしまった。 北マリアナ艦隊はこれを制圧し、さらに追撃を続けた。 結局、パラオは連合軍によって解放され、北マリアナ亡命アメリカ政府は一時の平和を得た。




あとがき・・・
よく考えたら純一活躍してません
まあ、わりと順調にここまで筆を進めてきたのですが・・・。

まあ、俺としては主人公に楽をさせようなんて思っていないので、 今回は特別休暇みたいなモンですね。
純一君、覚悟なさい



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